椅子に長時間座ると猫背になりやすい-原理と予防

椅子に座っているときの丸まった背中、気になりますよね。子供に背中を伸ばしてって言っても、いつの間にかまがって猫背になっていることが多いです。

そんな自分も、背筋を伸ばして座っていたはずなのに、しばらくしたら背中がまがっていることが多いと思いませんか?・・・いえ、多いというより長時間座っているとほぼ曲がっていると思います。

これは姿勢の意識や、姿勢の良し悪し以外にも、椅子ならではの理由があります。

体重を支える面を基底面と呼びますが、椅子に座ると基底面の中心が重心より前方に来てしまいます。座っているうちに重心線が徐々に基底面の中心に近づこうとするので、結果として猫背になってしまいます。

基底面と重心線

立った時の重心線と基底面

立つなり座るなりで人間が体を支えるには基底面と重心線が大事です。
基底面は体重を支えている面です。立っているなら足の裏のことですね。

重心線の理解にはまず重心を知らないとですね。

重心は物体にかかる全方向からの重力の合点、というと難しいですが、重さバランスの中心点のことで質量中心ともよばれます。その点で物を支えるとバランスよく立つよ、ってことですね。
重心線とはその重心を通る垂直線のことです。つまり重さの中心からまっすぐ地面に引いた線のことです。

正しい姿勢なら重心線は体の中央を通りますが、前傾姿勢だと重心線も前方にきます。では重心線がどこに来る時が一番安定するかといえば、基底面の中心です。

お盆にコップを一つ乗せることを考えると、お盆の端に乗せるのではなく、中心に乗せたほうが安定しますよね。基底面の中心に重さがかかれば、面全体に重さが均等にかかるので安定するわけです。

立っているときの基底面は両足の裏で作られます。背筋を伸ばすと重心線は足の中心あたりに来ます。
もちろん若干のずれは出る場合があり、背筋を伸ばしていてもやや前重心だったり、やや後ろ重心だったりすることはありますが、それほど大きくずれません。

重心が足の中心に来ると足の裏全体に体重が分散され安定するため、背筋を伸ばしたうえで重心線を基底面の中心にもってきたのが正しい姿勢でかつ、最も楽な姿勢となります。姿勢を正すと脚が疲れる人は足の裏全体、足の指から踵(かかと)全体に体重が分散されているか、確認してみましょう。(重心線が基底面の中心からずれているとバランスが悪いので、徐々に姿勢が崩れていきます)

このように、立っているときは正しい姿勢が最も楽な姿勢となりますが、椅子ではこれがうまくいきません。

椅子に座った時の基底面が問題

椅子に座った場合の、立っているときと同じ位置にきます。なので、背筋を伸ばした正しい姿勢は立っているときと変わりません。

では、基底面はどうなるでしょう?

椅子に座った時の重心線と基底面

左:椅子での正しい姿勢-基底面の中心が重心線よりかなり前にあるため、姿勢保持が難しい
右:前傾姿勢-重心線と基底面の中心が近づくので、腹部の筋肉などは楽。頭を支える首・肩は負担増

椅子に座ると脚が体の前方にきます。作られる基底面は、足が地面についている場合はお尻から足の裏までで、足が浮いている場合は椅子に面するお尻から膝までで作られるため、基底面は体の前方にかなり広く作られます。
そのため基底面の中心は重心より前方に作られてしまいます。

正しい姿勢をとるとバランスが悪く疲れやすいので、徐々に体幹が楽に感じる方向である基底面の中心に体が向かっていきます。そのため、椅子に長時間座っていると前傾の猫背になっていきます。

前傾が楽ならそれで良いのかといえば、そうはいきません。"楽に感じる"と表現したのはそのためです。
前傾すると腰・腹周囲の筋肉は楽に感じますが、前に出た頭部を支えるため首・肩・背中上部の筋肉を使わなければならなくなります。 正しい姿勢なら背骨で支えられたのに、前傾では骨が支えにならないので、首・肩・背中上部の筋肉は強い緊張を強いられ疲れてしまいます。

これが続くと肩こり、首の痛み、腰痛が引き起こされます。
やはり座っていても前傾姿勢は体によくないわけです。かといって普通に座っていれば正しい姿勢は次第に崩れていくのは上記の通り。

姿勢が崩れていくのを防ぐには重心線と基底面の中心を揃えるしかないので、普通の椅子では解決できません。

椅子を使う場合は体が疲れてくる前に、立ち上がって休憩をとることが望ましいです。
正しい姿勢で座り、時折休憩を取る。これを日々繰り返すことで、徐々に正しい姿勢でいられる時間は長くなっていきます。まさに姿勢トレーニングです。
どんなにトレーニングを積んでもバランスが悪いことは変わらないので、疲れたらどうやっても前に曲がってはいきますが。

常に椅子で正しい姿勢を保つには、特別な椅子を用いて基底面を変える、椅子に何かを置いて基底面の角度を変えるなどの工夫が必要です。これならトレーニングは不要ですし、常に正しい姿勢を保てます。

個人でこの角度やバランスを導き出すのは困難なので、姿勢グッズを使うことになりますね。
椅子に座る時間が長いなら、投資分の見返りは十分にありますよ。

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